act.16 狂犬の哀

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一気にまくし立てるカイトを横目でチラッと見ながら、鼻で笑う。 「……女を言い訳にして、逃げるのは嫌いなんじゃなかったかしら? 女なら、平手うちなんて……固定観念もいいとこだと思うんだけど?」 カイトがグッと言葉を飲み込む。 気持ちがせいせいする。 「先に行くわよ」 何か言いたげなカイトを無視して、寝室から隣の部屋に移動した時だ。 複数の気配を感じた。 廊下から―― 素早く近づいて来ている男たちの気配―― 銃の安全装置を外す音と、撃鉄を起こす音――。 思わず舌打ちをしながら、カイトの方を向く。 だから早くしろと言ったのに―― そう言わんばかりに睨み付けてやると、カイトも状況を飲み込んだのか、肩をすくめながら、私に答えた。 「まぁ……起こってしまったもんをグダグタ言うてもしゃあないやん。死んだ子の歳を数えるなとも言うしな……」
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