34人が本棚に入れています
本棚に追加
「おう、狂っとけ」
そう笑いながら返すと、蜥蜴の手が俺のシャツを掴んだ。
それはまるで、幼い子供が父親にすがるようで――
複雑な気分ではあったが、どこか心地よかった。
店の中に入ると、八雲が奥から顔を出した。
「座敷の方は準備できたから、なっちゃんも一緒に……」
八雲の言葉を遮るようにして、奥の座敷へ蜥蜴を抱いたまま連れて行く。
座敷には、カイトが先に横たわっていた。
「あ、佐多さん。カイト君の隣になっちゃん下ろしてもらえるかな?」
後ろから八雲にそう言われ、ソッと蜥蜴をその場に下ろす。
シャツを掴んだ手が俺から離れ――
シャツに蜥蜴のぬくもりが残る。
八雲が救急箱を開き、準備をしているのを後ろに下がって眺める。
「こら」
いつの間にいたのだろうか。
千冬女将が俺の後ろに立っていた。
最初のコメントを投稿しよう!