act.17 獅子の哀

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「おう、狂っとけ」 そう笑いながら返すと、蜥蜴の手が俺のシャツを掴んだ。 それはまるで、幼い子供が父親にすがるようで―― 複雑な気分ではあったが、どこか心地よかった。 店の中に入ると、八雲が奥から顔を出した。 「座敷の方は準備できたから、なっちゃんも一緒に……」 八雲の言葉を遮るようにして、奥の座敷へ蜥蜴を抱いたまま連れて行く。 座敷には、カイトが先に横たわっていた。 「あ、佐多さん。カイト君の隣になっちゃん下ろしてもらえるかな?」 後ろから八雲にそう言われ、ソッと蜥蜴をその場に下ろす。 シャツを掴んだ手が俺から離れ―― シャツに蜥蜴のぬくもりが残る。 八雲が救急箱を開き、準備をしているのを後ろに下がって眺める。 「こら」 いつの間にいたのだろうか。 千冬女将が俺の後ろに立っていた。
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