34人が本棚に入れています
本棚に追加
文句を言い、厨房の方へ行く女将の背中を見ながら、灰皿を手元に引き寄せ、カウンターの椅子に座った。
煙草を取り出し――
火をつける。
紫煙が目の前に揺らめき、それを見つめていると、蜥蜴とのあるやり取りが思い出された。
『ねぇ……。煙草はやめた方がいいんじゃない? 身体に悪いわよ?』
いつだったか、事務所でそう言われたことを――なぜか今、思い出す。
『煩いやっちゃな……。やめれる時にやめるから構うな』
そう、返したんだっけか……。
フッと思い出し、笑いながら、まだ残っている煙草の火を消し、灰皿に捨てた。
「……やぁらしぃ~。思い出し笑い? やぁらしぃ~」
いつの間に帰ってきていたのだろうか。
千冬女将がお盆を手に、冷めた目で俺を眺めていた。
「なんだよ、そりゃ……」
苦笑しながら、女将を見る。
最初のコメントを投稿しよう!