act.17 獅子の哀

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沈黙を支配させたまま、俺は車を走らせ続けた。 後部座席をチラッと見やる。 蜥蜴の膝の上―― 子供が眠るようにして、カイトが横たわっている。 その様子が――苛つく。 大人げないのは充分に自覚している。 二人の間に流れている感情は、母と子のそれに近いものだということもわかっている。 けれども、わかってはいても、苛つくものは苛つく。 荒くなりそうな運転をどうにかコントロールしながら、八千代が見えてきたことを確認する。 「ついたぞ、八千代だ……」 長い沈黙を破るように、蜥蜴にそう言うと、蜥蜴はホッとしたように、息を吐いた。 「カイト、ついたよ? もう少しだから……頑張って?」 蜥蜴の優しい声に、舌打ちしたくなる衝動を抑える。 ――俺に対して、そんな風に優しい声を出したことないよな?
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