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沈黙を支配させたまま、俺は車を走らせ続けた。
後部座席をチラッと見やる。
蜥蜴の膝の上――
子供が眠るようにして、カイトが横たわっている。
その様子が――苛つく。
大人げないのは充分に自覚している。
二人の間に流れている感情は、母と子のそれに近いものだということもわかっている。
けれども、わかってはいても、苛つくものは苛つく。
荒くなりそうな運転をどうにかコントロールしながら、八千代が見えてきたことを確認する。
「ついたぞ、八千代だ……」
長い沈黙を破るように、蜥蜴にそう言うと、蜥蜴はホッとしたように、息を吐いた。
「カイト、ついたよ? もう少しだから……頑張って?」
蜥蜴の優しい声に、舌打ちしたくなる衝動を抑える。
――俺に対して、そんな風に優しい声を出したことないよな?
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