act.17 獅子の哀

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「なんで、あんたが仕切っとんのじゃ!!」 怒鳴る千冬女将を無視して、店の中に入ろうとすると、八雲があわてて、俺に声をかけてきた。 「すいません、佐多さん。店の中で座って待っててください。すぐにちーちゃんに用意させますから……」 「……お湯に塩入れたのでいいわね?」 「ちーちゃん!!」 「冗談よ」 「ちーちゃんの冗談に聞こえないから!! それと、二人の治療に取りかかりたいから、救急箱、用意しといて」 「工具箱?」 「救急箱!! カイト君はともかく、なっちゃんもいるんだから!!」 「俺はええんかい!!」 ほとんど漫才に近いやり取りを見ながら、ため息を吐く。 かつて、この二人――八雲と千冬女将は組織の中でも、恐れられている存在だった。 ――現役を退くとこんなにも人は変わるものなのか?
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