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「なんで、あんたが仕切っとんのじゃ!!」
怒鳴る千冬女将を無視して、店の中に入ろうとすると、八雲があわてて、俺に声をかけてきた。
「すいません、佐多さん。店の中で座って待っててください。すぐにちーちゃんに用意させますから……」
「……お湯に塩入れたのでいいわね?」
「ちーちゃん!!」
「冗談よ」
「ちーちゃんの冗談に聞こえないから!! それと、二人の治療に取りかかりたいから、救急箱、用意しといて」
「工具箱?」
「救急箱!! カイト君はともかく、なっちゃんもいるんだから!!」
「俺はええんかい!!」
ほとんど漫才に近いやり取りを見ながら、ため息を吐く。
かつて、この二人――八雲と千冬女将は組織の中でも、恐れられている存在だった。
――現役を退くとこんなにも人は変わるものなのか?
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