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まぁ……俺が知らなかっただけかもしれないが……。
そんなことを考えながら、店の中に入ろうとした時だった。
「なっちゃん!?」
千冬女将の声で、振り返る。
「大丈夫……。ちょっと安心したら……めまいがしただけだから……」
座り込み、はにかむようにして笑う蜥蜴がそこに居た。
「大丈夫じゃないでしょう!? 顔が真っ青じゃない!! ほら、肩を貸してあげるから……」
そう言いかけ、蜥蜴に手を伸ばす千冬女将をぐいっと押し退ける。
「どけ」
「なっ!? どけ!? どけとな!?」
騒がしくしている千冬女将を無視しながら、蜥蜴の前に座る。
「立てるか?」
そう聞くと、蜥蜴が不敵に笑った。
「立てるわよ」
俺を睨みながら笑う蜥蜴に、鼻で笑い返してやる。
「……何よ?」
カチンときたのか、蜥蜴の語尾に刺が感じられた。
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