act.17 獅子の哀

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まぁ……俺が知らなかっただけかもしれないが……。 そんなことを考えながら、店の中に入ろうとした時だった。 「なっちゃん!?」 千冬女将の声で、振り返る。 「大丈夫……。ちょっと安心したら……めまいがしただけだから……」 座り込み、はにかむようにして笑う蜥蜴がそこに居た。 「大丈夫じゃないでしょう!? 顔が真っ青じゃない!! ほら、肩を貸してあげるから……」 そう言いかけ、蜥蜴に手を伸ばす千冬女将をぐいっと押し退ける。 「どけ」 「なっ!? どけ!? どけとな!?」 騒がしくしている千冬女将を無視しながら、蜥蜴の前に座る。 「立てるか?」 そう聞くと、蜥蜴が不敵に笑った。 「立てるわよ」 俺を睨みながら笑う蜥蜴に、鼻で笑い返してやる。 「……何よ?」 カチンときたのか、蜥蜴の語尾に刺が感じられた。
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