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綺麗な月夜だった。
キンと冷えた空気が肌を刺し、繋いだ手の温かさをより一層引き立てる。
ふわりと上がる白い息。
赤く染まる彼女の頬。
「本当、ずるい……」
横断歩道の前に立ち、車道を走る一台の車が通り過ぎるのを待った。
隣から聞こえた声に、ふっ。と口元が緩む。
繋いだ手の力をほんの少し抜いてみた。
それに気がついた彼女の手が少しずつ
少しずつ、逃げていく。
逃がすつもりはなかった。
けれど
それを追いかけるには、まだ何かが足りない様な気がした。
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