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「ありました」
キーケースを取り出した彼女はそう言って俺を見上げ、両手を差し出す。
欲しいのは俺の右手にあるバスケットだろう。
「……」
「……」
見上げる彼女。
見下ろす俺。
「……」
「……」
しばし見つめ合い、どちらか片方が折れるのを待った。
ふわり。暗闇に浮かんだ白。
「どうぞ」
諦めて吐いた、俺の溜め息。
バスケットを受け取った彼女は「ありがとうございます」と満足げに礼を言い、小さく頭を下げた。
「バスケットは後で江茉さんに渡して」
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