群青2 モノクロ第4話

23/38
前へ
/38ページ
次へ
「言わないの?」 彼女の顔を両手で挟み、力ずくでこちらを向かせた。 冷たい空気に触れているせいか、ひんやりと冷えた頬。 結構な至近距離で目が合い、彼女が「っわ」と小さな声を上げる。 素直な反応に自然と口角が上がった。 家の玄関前ではあるが、中にいる彼女の家族が出てくる気配はない。ここに俺達がいるという事に気がついていないんだろう。 呑気といえば呑気だが。今はそれが有り難い。 「ち、近っ」 「俺に知られたくないから言わないの?それともただの意地悪?意地張ってるだけ?」 声を抑えて必死に抵抗する彼女を覆うように、身体と顔を近づけた。 俺の手の温度と彼女の頬の温度が交わる。 ふにふにと柔らかい感触が案外気持ちよくて、ずっと触っていたい衝動に駆られた。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1550人が本棚に入れています
本棚に追加