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「言わないの?」
彼女の顔を両手で挟み、力ずくでこちらを向かせた。
冷たい空気に触れているせいか、ひんやりと冷えた頬。
結構な至近距離で目が合い、彼女が「っわ」と小さな声を上げる。
素直な反応に自然と口角が上がった。
家の玄関前ではあるが、中にいる彼女の家族が出てくる気配はない。ここに俺達がいるという事に気がついていないんだろう。
呑気といえば呑気だが。今はそれが有り難い。
「ち、近っ」
「俺に知られたくないから言わないの?それともただの意地悪?意地張ってるだけ?」
声を抑えて必死に抵抗する彼女を覆うように、身体と顔を近づけた。
俺の手の温度と彼女の頬の温度が交わる。
ふにふにと柔らかい感触が案外気持ちよくて、ずっと触っていたい衝動に駆られた。
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