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「おかえりなさい。ご苦労様でした」
「ありがとうございます。まだ起きていらしたんですか?」
車をガレージに入れ、屋敷に戻ると、チェックのショールを羽織った江茉さんがリビングで迎えてくれた。
「車が入ってきたのが見えたので」
「そうですか。景さんは?」
「お風呂に入ってます。竹さんから『先に帰ります』と言付かりました」
「わかりました。では、私もそろそろ」
「飯山さんの実家って遠いですか?少し時間がかかったような気がしますけど」
風呂に入らずに俺の帰りを待っていたんだろうか。屋敷を出た時と服装が変わっていない彼女。
余計な詮索をされないうちに消えようかと思っていた矢先に、聞かれたくない話を振られる。
「帰り道で迷ってしまいました。心配かけてしまったなら、すみません」
サラリと言った言い訳を信じたかどうか定かではないが、一呼吸置いた後、無表情の彼女は「そうですか」と答えた。
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