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「ここでいいです」
「家までお送りします」
「こんな高級車が家の前に停まったら母が驚きますし、近所の噂になります」
「気にします?そういうの」
「しますよ。しないんですか?」
「ええ。全く」
飯山さんを彼女の実家まで送る途中。
「寄ってください」と指をさされたコンビニの駐車場で、お礼だと言って渡された缶コーヒーのプルタブを開ける。
開けた途端、コーヒーの香ばしい香りが車内に漂った。
「確かに、気にしなさそうですね。乾さんも、乾課長も。羨ましいです」
彼女の膝の上にあるコンビニの袋がカサカサ鳴る。
出てきたのは期間限定のチョコレート。
「これもどうぞ」と言って差し出されたそれを受け取り、礼を言う。
もうひとつ、袋に入っていた同じ物は後で彼女が食べるんだろう。手の下に隠すそれには敢えて触れず、缶コーヒーに口をつけた。
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