1章

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side岡田頼人 今日はとあるIT関連の面接日。 面接官である俺は今日で何人の面接をしたのであろう。初々しい若者が面接に訪れる。 面接する側というのも大変だ。ありきたりな面接の常套句を並べるだけの退屈な時間。ほんとうに、最悪だ。 「ちょっと空き時間できたから飲みもん買ってくるか」 ボソッとつぶやいて自販機に向かう。 すると、奥から可愛らしい影が近づいてきた。幼顔の男の子という感じだ。見た目は良くて高校生。新入社員の風貌には見えないけれど、ここにいるということはそうなのであろう。 彼はおれに近づき、こう言った。 「あ、あの、これ、そうですよね?」 差し出された俺の万年筆。いつ落としたのか気づきもしなかった。 「ああ。ありがとう。」 にこやかに答えた。もちろんビジネススマイルだが。 「いえ、よかったです。ぼ、ぼく、もうすぐ面接なので失礼します」 声変わりをしたのかわからないほど高めの声、低い身長、幼顔、全てが俺の好みであった。 「あの子、新入社員だったんだな。かわいいな」 俺は一目惚れだったのだと今になって気づく。いや、初めから気づいていたのかもしれない。気づかないふりをしていただけで
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