act.18 龍と人の哀

11/19
前へ
/19ページ
次へ
そう伝えようとして、言葉を飲み込む。 今さら、彼に何を伝えようと言うのか―― 私にそんな資格なんてない……。 一度だけではなく。二度、私は遥汰の優しさを突き放した。 愛を拒んだ。 そんな私にもう一度、光をくれようとしている遥汰に……すがる資格なんてない……。 「ねぇ、なずなさん……」 黙ったままの私に遥汰が優しく微笑む。 そんな風に…… 優しく笑わないで……。 私なんかに優しく笑わないでよ……。 辛くなるから……。 遥汰から視線を外す。 「なずなさん……。また、逃げるの?」 それは私にまっすぐに向かってくる言葉で―― 「俺は逃げないから。逃げたくない。だって……貴女のことが好きだから」 “貴女のことを……愛していきたいから”
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加