act.18 龍と人の哀

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いっそ、出会わなければよかったのかもしれない。 黄昏時の―― 少しだけ肌寒くて、優しい風が吹く時間――。 遠くから近づいてくる自転車の音。 軽やかに飛び降り、そうして彼は私に声をかける。 “なずなさん” ――と。 他愛ない会話。穏やかな空気。 でも、それは―― どんなに望んでも、願っても。 帰ってはこない。 失って初めて気がついた。 私は…… 遥汰と過ごす短い時間を…… 遥汰のことを…… 心の底から愛していたのだ。 “なずなさん” その声がどこにもないことが……こんなにも悲しいなんて…… 失って初めて気がついた―― “本当の愛”
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