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いっそ、出会わなければよかったのかもしれない。
黄昏時の――
少しだけ肌寒くて、優しい風が吹く時間――。
遠くから近づいてくる自転車の音。
軽やかに飛び降り、そうして彼は私に声をかける。
“なずなさん”
――と。
他愛ない会話。穏やかな空気。
でも、それは――
どんなに望んでも、願っても。
帰ってはこない。
失って初めて気がついた。
私は……
遥汰と過ごす短い時間を……
遥汰のことを……
心の底から愛していたのだ。
“なずなさん”
その声がどこにもないことが……こんなにも悲しいなんて……
失って初めて気がついた――
“本当の愛”
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