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――――――
「それじゃ、佐和さん、お先します。お疲れ様でした」
「はーい、気をつけて帰ってくださいね」
明るく笑う佐和さんに手を振り、勝手口から外に出たあと、ため息を吐く。
黄昏時の風が私の頬を優しく撫でていく。
ジーパンのポケットからスマホを取り出し、佐多からの連絡がないか、確認する。
確認しながら――
遥汰の名前を探している自分に思わず苦笑する。
――私も未練がましいなぁ……。
諦めると。遥汰をこれ以上巻き込まないためにも。傷つけないためにも。
別れようと。忘れようと決めた筈なのに――。
未練がましく期待している自分が情けない。
着信があるんじゃないのか? もしかしたら、前と変わらず待っていてくれて……
「……なずなさん」
――え?
聞き覚えのある優しい声。
ゆっくりと近づいてくる――人影。
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