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「施設はね……いいところだったよ。みんな優しくて温かくて……。あの頃が一番幸せだったかな……」
「そう……なんだ……」
遥汰が小さく返事をした。
「うん。いつまでも居たかったけど……。自立できる年になったら、出ていかなくちゃって……。定員いっぱいのとこだったから、迷惑かけられないって思って、高校卒業と同時に自立したの」
「……でも、寂しかったんだよね、私」と自嘲ぎみに笑いながら説明する。
「馬鹿で単純な話。男に騙された」
「……え?」
「寂しかったから、その寂しさを埋める為に、男を求めた。男に求めた」
今となっては、相手の顔もろくに思い出せない。
寂しさを埋める為だけの男。
その程度の男を……私は“愛してる”と勘違いし、“愛されてる”と勘違いした。
本当に馬鹿だったと思う。
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