act.19 契り

5/15
前へ
/15ページ
次へ
「……最低の男だな」 吐き捨てるようにそう言った遥汰に、苦笑する。 「でも……その最低の男が好きだった。いや……好きって勘違いしてた。だって、本当に優しくて、私に温かさをくれた人だったから……。良い人だったよ?」 ただ、その良い人は―― 他の女にも優しくて良い人で―― 自分自身にも優しい人だっただけの話――。 自分に都合の良い女には、表面上の優しさを与えてくれるだけの男で、その優しさを愛と勘違いして――都合よく、手のひらの上で転がされていたのが……私。 「なずなさんの方が優しいよ。そんな最低な男を庇うみたいに言ってさ……」 「少し妬ける」――と。 聞こえるか聞こえないかぐらいの声で呟く遥汰が微笑ましかった。 「優しくなんかないよ?」 だって……
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加