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「刺しちゃったから」
「……え?」
遥汰の顔が強ばっていく。
予想はできていたけど……やはり、辛い。
「男に“そういうところが嫌になったんだよ”って言われた時……目の前が暗くなって……自分が自分じゃないみたいな感覚が襲ってきて……気がついたら、台所の包丁を手に持ってて、男が呻きながら倒れてた」
遥汰の視線が――いつでも迷いのない強い視線が揺らいだのがわかって、つらかった。
遥汰が小さな声で私に聞いてきた。
「……その男、殺したの?」
そんな遥汰に苦笑まじりに答える。
「知ってる? 遥汰君? 人ってね……意外と強いの。素人の……非力な女が包丁で一突きしたぐらいで、男は簡単には死なないわよ」
「でも、殺人未遂には違いないんだけどね」と自嘲ぎみに続ける。
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