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「警察に電話を入れたのは、私が刺した男。自分のことは棚上げにして、逆恨みだの逆ギれだの喚いてたのは覚えてる。もう……その時はどうでもいいやって気持ちでいっぱいだったんだけどね」
愛し愛されてると思っていた男は、実は勘違いのまやかしで――
そんな男を刺して、一生を棒に降ってしまったバカな私――
もう何もかも……どうでもよかった。
「情状酌量とか、生い立ち云々とかで思ったより罪は軽かったけど、そんなことどうでもいいやって感じで……自暴自棄になってた」
「そこに……あの男が来たのよ」――と、遥汰に囁くようにして告げた。
「……あの男」
「佐多よ」
黄昏から――夜を迎えようとしている逢魔の闇が、遥汰の言葉と表情に影を落とした。
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