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「本当はワインの方が好みなんだがな……」
苦笑しながら、老酒を口に含み、銀狼から投げつけられた写真を眺める。
「さて……。どうなるかな。遥汰君……」
写真を眺めながら――佐多はふと思い出す。
千冬の言葉――。
“幸せを願うことはないのか”
何が幸せで、何が不幸なのか。
その基準はとても曖昧で。
誰にという風にでもなく、佐多は笑う。
「長く居すぎたのかもしれないな……」
“闇”の世界に長く居すぎた。
だから、ふと思ったのだろうと――。
もしも、俺と蜥蜴が違う世界で。違う出会い方をしていたら。
もっと、違う形の愛を築けたのかもしれないと――
老酒を喉に流し込み、その熱に耐えるようにして、佐多はそんなことを思うのだった。
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