act.23 罠

18/18
前へ
/18ページ
次へ
「本当はワインの方が好みなんだがな……」 苦笑しながら、老酒を口に含み、銀狼から投げつけられた写真を眺める。 「さて……。どうなるかな。遥汰君……」 写真を眺めながら――佐多はふと思い出す。 千冬の言葉――。 “幸せを願うことはないのか” 何が幸せで、何が不幸なのか。 その基準はとても曖昧で。 誰にという風にでもなく、佐多は笑う。 「長く居すぎたのかもしれないな……」 “闇”の世界に長く居すぎた。 だから、ふと思ったのだろうと――。 もしも、俺と蜥蜴が違う世界で。違う出会い方をしていたら。 もっと、違う形の愛を築けたのかもしれないと―― 老酒を喉に流し込み、その熱に耐えるようにして、佐多はそんなことを思うのだった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加