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緋色の絨毯と見るからに高価な調度品――。
(堅苦しいとこは苦手なんだよな……)
チャイナドレスを身に纏う、美しい女性に案内された男が一人。
女性に聞こえないようにそう小さく呟いた。
わりと名前の知られた料理人が経営する中華料理店――。
値段も、格式も。
正直、男にはもて余すレベルで――
(ったく……。相変わらず、カッコつけのオッサンっつぅか……。いちいち気取らないと生きていけないのかよ、あのオッサンは……)
軽くため息を吐きながら――
「あのさ……」
男は案内している女に声をかけた。
「なんでしょうか?」
女が足を止め、艶やかに微笑む。
「煙草。吸っていい?」
「申し訳ございません。廊下は禁煙となっておりますので……。今から案内する個室の方は喫煙できますゆえ、そちらの方でお願い致します」
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