act.23 罠

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「容赦ねぇな……。ホント、美人なのにもったいない……」 女から離れ、ぶつぶつと文句を言う銀狼に、女は微笑みだけを返し、再び歩き出す。 ふんっと鼻で苦笑しながら、銀狼が女の後を歩いた。 案内された個室のドアを女が開く。 「佐多様。銀狼様がおみえになりました」 「ああ……」 気のないような返事に、銀狼が個室の中を覗く。 円卓を前に。 こちらに背を向け座っている男――。 「珍しいね、サタタが俺に用事なんて。俺のこと嫌いなんじゃなかったの?」 声をかけられた男――佐多がほんの少しだけ振り返り、視線を動かした。 「お前……。俺は何度も言ったはずだぞ?“その呼び方はやめろ”って」 「しょうがないじゃん。多って字。タが並んでるんだもん。俺じゃなくて、漢字のせいだから」
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