第1章

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もう、これは十年も前の話だ。 私も気が付けば、二十四歳になり、仕事にも就き、だいぶ慣れた。 あの時、父が言っていた『嫌な仕事』も多々あった。 その度に真似をして、煙草を吸おうとも考えたが、 幼い頃に父がわざわざ遠ざけてくれたことを無駄にしたくない、そんな理由で吸わなかった。 その所為で、煙草を見る度に今も胸が痛む。 痛みを苦みに変えて、ブラックコーヒーを喉へと流すようにした。 とはいってもコーヒー自体も好きではない。 一息吐いてから、手元の資料に目を向ける。 【平成××年×月××日】 ×××の火災について、 ――――――――――――――――……‥‥ ―――――以下の事から、これは煙草の不始末による火災であると判断する。 ◎押収品目 ・××× ・陶器の灰皿 ・煙草 (タール10mg*ニコチン0.8mg) ・×××× ・××× 所々人為的に消されている捜査資料。
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