ジューンブライド・チケット

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 路地を少し入ると、輝きの正体を発見した。  そこには、大きな池があった。池……と呼んでいいのだろうか?金網の向こうに広がるのは、サッカー場よりも広い海のようなプールだ。そして、何よりも圧巻なのは、そのプールの向こうそびえ立つ建物だ。野球場のスタンドに似ていて、大きな屋根と、その下の階段状の段々は、客席かもしれない。それは、広いプールの向こう側いっぱいに、長く、高く、存在感いっぱいに目の前に広がっている。だけど、今は誰もいない。それでも、シン……と静まり返っているこの場所から、私の頬を照らすように、熱い熱が感じられた。  私が駅を降りて、惹き寄せられて来たのは、この場所だったのかもしれない。  ここは何だろう……?  辺りを見回して見るけれど、どうやら施設の向かい側に居るようで、看板などは見つけられない。  その時、少し離れた場所に居る青年に気が付いた。すぐに気が付かなかったのは、その青年が生け垣の影から現れたからだ。ラフなジーンズ姿で、手にビニールのゴミ袋と大きなトングを持っているところを見ると、どうやらゴミ拾いをしているようだ。しかも、夢中になってやっている。小柄で細身の青年は、勤勉な学生さんのようだった。  また、熱い風が吹いた。  その風は、ヒラリと、私の足元に、一枚の小さな紙切れを運んできた。  なんとなく、その紙切れを拾おうとした私の指先に、太陽を遮る影が被さった。顔を上げると、先ほどの青年が私の直ぐ近くに居た。青年は、 「すいません、ありがとう」 と、人見知りなのか、はにかみながら、私に向かって、手にしたビニール袋を差し出してきた。  私は足元の紙切れを拾い上げ、んっ?と首を傾げた。 「待って、これ、落とし物かも?」  キャッシュカードほどの大きさの四角い紙切れには、数字や日付が印刷されていた。 「電車の切符かな?何かのチケットみたい」  印刷されている記号の謎を解き明かそうとしている私の手元を青年はそっと覗き込んだ。  そして、苦笑いを浮かべながら言った。 「それは、舟券といって、ボートレースの券だよ」
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