ジューンブライド・チケット

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 彼は、ボートレーサーなんだ。本当だった!!  あの穏やかそうな彼が……、志茂部さんが、レースをするときは、どう変わるのかな?  彼にもう一度会うために、私はもう一度、あの場所に行こう。  そして、約束のチケットを買おう。  季節は初夏から梅雨に入った。  梅雨の晴れ間が広がった今日、私の誕生日、私は、自分が一方的にした約束通りに、この平和島ボートレース場を訪れた。自前のアンテナのおかげで迷わずに来ることが出来た。ここは、とても熱い場所だから、私を導いてくれる。  あの日は、プールの向こう側に居たけれど、今日は、この大きな建物にやってきた。大きなゲートから中に入る。  場内はたくさんの人で賑わっていた。食べ物やさんの呼びこみの声や、食欲をそそるいい匂い、レースの行方に興奮している賑やかな声、楽しそうな音楽、まるで縁日みたいだ。  ボートレースのことは、ネットで少し知識を得てきたけれども、勝手がわからず、人混みの中でキョロキョロしてしまう。不意に彼が、 「大丈夫?」 なんて優しい声をかけてくれないかな?なんて思ってしまうけれども、もちろん、彼の姿は見つけられない。  私は、人々の熱気に揉まれながら、見知ったばかりの知識で、券売機から、どうにか、彼に約束したチケットを一枚、買った。  彼の出場するレース、最終レース、12レースの、『6―2―4』、今日、私の誕生日の数字。  数字の順番に、6の数字が付いたボートが一着で、2の数字の付いたボートが二着で、4の数字の付いたボートが三着なら大当たり。  彼の乗るボートの番号は『6』。  彼の勝利が、私の大当たり。  彼は、自分が『6』に乗るって、わかっていて私をここへ誘ったんだろうか?彼は……、私のことを覚えているだろうか……?  生まれて初めて買った舟券を見つめながら、色々考えてしまう。あまり出ない数字の並び方って言ってた。私以外にも、この番号を買った人っているのかな?いなかったりして。  フフッ、ワクワクする。
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