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そうして、いたずらっ子のような笑顔を私に向ける。
おそらく、私を気遣ってくれているのだろう。
不安を取り除こうと、わざとそう言ってくれるカイトの優しさがじわりと心に沁みた。
「ほら、降りるで、蜥蜴ちゃん」
腕を軽く引っ張られ、タクシーから降りる。
私たちを降ろしたタクシーが動き出し、病院の外来玄関の明かりが私たちを照らす。
「ほなら、行こうか。連絡入れたから、先にお禿げさんとオババンが着いとると思うんやけど……」
独り言なのか、私に言っているのか。
カイトがぶつぶつと言いながら、病院の中に入って行こうとする。
「……カイト」
「あ? なんや?」
カイトの背中に声をかけると、カイトがくるっと振り返った。
「いろいろと……ごめんなさい。あなたには関係ないことなのに……」
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