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「だろうな……。もう……遅い……。気づいた時には……遅かったんだよな……」
頬に触れていた佐多の手が私の腕を掴み、グッと抱き寄せられた。
「……蜥蜴」
強く抱きしめられ、耳元で優しく囁かれ――。
涙が溢れそうになる。
佐多の背中に手を回し、強く抱き返した時だった。
「……蜥蜴」
もう一度囁かれ――。
“本当に……”
“お前はヘドが出るほど甘いな”
全身が総毛立つほどの殺気が私を包み――。
「……!!」
佐多から離れようと、腕の中でもがくと、首に手をかけられ、身体ごと助手席に叩きつけられた。
「うぁっ!!」
不自然な形に助手席に押し倒され、身体中に痛みが走る。
視線を上に向けると、狂気をはらんだような笑顔で佐多が見下ろしていた。
「……悪いな、寺鷹。賭けは……俺の勝ちだ」
佐多の冷たい声に――
身体が凍えた――。
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