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「少し……いいか?」
そう佐多は呟き、車を倉庫の建ち並ぶ、埠頭へと停車させた。
「……お前は」
佐多が煙草を取りだし、火をつける。
「お前は……本気であの男を愛してるのか?」
あの男――遥汰のことか……。
何を今さらと思いながら、佐多に返事をする。
「ええ、愛してるわ……」
「何もかも……捨ててもいいぐらいにか?」
「ええ……」
今ある全てを捨てて、遥汰と共にありたい。
「もしも……」
佐多がこちらを向く。
佐多の表情に、思わず釘付けになる。
今まで――
見たことない――。初めて見る顔だった。
この男が……こんな風に優しく笑う顔を――
私は見たことない。
私は……知らなかった。
佐多の笑顔に引き込まれるようにして、身体の熱が上がっていく。
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