act.26 焔

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「あの……」 兄貴分の男が私に声をかけてきた。 「自己紹介がまだやったから……。俺、カイト君の兄貴分というか……。マルムスって言います」 「マルムス……さん?」 「あはは、まぁ、その……あだ名っちゅうか、通り名みたいなもんですわ。あんたの火蜥蜴みたいな」 「まぁ、あんたほど有名人やないっすけど」とマルムスと名乗った男が笑う。 「あ、俺のことはマルって呼んでもろて構いませんから」 ニコニコと笑うマルムス―― 柔和な雰囲気と刃物のような鋭さを兼ね備えた―― 相反する二つの魅力を持った不思議な男だと――。 ぶつぶつと文句を言いながらも、カイトが兄貴分を慕っているその理由がわかった気がした。 「しかし……カイト君も難儀な人を好きになってもうたもんやな……」 マルムスが苦笑する。
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