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「あの……」
兄貴分の男が私に声をかけてきた。
「自己紹介がまだやったから……。俺、カイト君の兄貴分というか……。マルムスって言います」
「マルムス……さん?」
「あはは、まぁ、その……あだ名っちゅうか、通り名みたいなもんですわ。あんたの火蜥蜴みたいな」
「まぁ、あんたほど有名人やないっすけど」とマルムスと名乗った男が笑う。
「あ、俺のことはマルって呼んでもろて構いませんから」
ニコニコと笑うマルムス――
柔和な雰囲気と刃物のような鋭さを兼ね備えた――
相反する二つの魅力を持った不思議な男だと――。
ぶつぶつと文句を言いながらも、カイトが兄貴分を慕っているその理由がわかった気がした。
「しかし……カイト君も難儀な人を好きになってもうたもんやな……」
マルムスが苦笑する。
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