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「ああ、それから……」と佐多がもうひとつ投げて寄越す。
「これ……」
「餞別だ。寺鷹んとこに預けてある。その鍵を持って寺鷹んとこに行け。あとは寺鷹から聞けよ」
佐多が苦しそうに咳き込んだ。
「あんたは……」
“一緒に行かないの?”
そう言いかけて、言葉を呑み込む。
「……お前、何を言いかけたんだよ?」
私の呑み込んだ言葉を――察したように苦笑しながら、佐多が手招きした。
黙ったまま、佐多に近づき、佐多の前に座る。
佐多の手が私の頬に触れ、愛しそうに撫でられた。
「お前さ……。こんな時ぐらい……“あんた”じゃなくってよ……。名前で呼べよ……」
「バカ……」
「なんだよ、何を泣いてんだよ……」
まるで会話になってない――滅裂な言葉を互いに紡ぎ――
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