act.27 哀と愛

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佐多が私の腕を掴み、グッと引き寄せ―― 「……!!」 そのまま、唇を重ね合わせ―― そのキスは―― 激しく求めるようで、それでいて何かを与えてくれるような優しさを持っていて―― 多分、これは―― 佐多と交わす、最初で最後の――優しいキス。 「……亨」 唇を離し、そのキスに答えるように佐多の名を呼ぶ。 「愛してたわ……。亨……」 「俺もだ……。お前を……愛してた……」 耳もとで囁くようにして、呼ばれる。 “なずな”――と。 佐多がニヤリと笑い、私を突飛ばした。 「行け。じきに組織の奴らがここに来るだろう。その前に……寺鷹のところに行くんだ」 「振り返るな、前だけ見て行け」と佐多が笑い。 「……さようなら」 それだけを告げ、私はその場から勢いよく駆け出した。 背後で―― 佐多が満足そうに笑っているのが見えたような気がした――。
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