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佐多が私の腕を掴み、グッと引き寄せ――
「……!!」
そのまま、唇を重ね合わせ――
そのキスは――
激しく求めるようで、それでいて何かを与えてくれるような優しさを持っていて――
多分、これは――
佐多と交わす、最初で最後の――優しいキス。
「……亨」
唇を離し、そのキスに答えるように佐多の名を呼ぶ。
「愛してたわ……。亨……」
「俺もだ……。お前を……愛してた……」
耳もとで囁くようにして、呼ばれる。
“なずな”――と。
佐多がニヤリと笑い、私を突飛ばした。
「行け。じきに組織の奴らがここに来るだろう。その前に……寺鷹のところに行くんだ」
「振り返るな、前だけ見て行け」と佐多が笑い。
「……さようなら」
それだけを告げ、私はその場から勢いよく駆け出した。
背後で――
佐多が満足そうに笑っているのが見えたような気がした――。
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