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「……賭……けって……」
押さえつけられ、呼吸を制限させられながら――。
それでも必死に言葉をつむぐ。
「ここに来る前にな。寺鷹のやつがこう言ったんだよ」
“何があったか、僕にはわかりません。けれども……彼女ともう一度だけ、やり直してみてくれませんか?”
“僕は……彼女も貴方も。失っていいものだとは思えない”
“だから”
“賭けましょう”
“彼女が飲み干したあのカクテルをもう一度。二人に飲んで貰うことができたらなら”
“やり直す道を互いに選ぶことができたなら”
「……賭けは僕の勝ち、だとよ」
苦笑しながら、佐多が手に力を込める。
一瞬、意識が遠退く。
「おっと、まだ落ちるなよ?」
佐多が楽しそうに笑った。
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