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「倉智、俺はここで何をすればいい?」
儀式と言うものに、関心がない現状
流されるままにしている感覚が拭いきれない。
「只今より、私が徳力のものを呼びに参ります。
涼夜さまは、この場所から御簾をあげることなく
言葉を交わしてください。
お言葉は直接、交わされても構いません」
そう言うと、倉智は静かにお辞儀をして
その部屋を後にする。
「影宮、徳力様、現当主後見役。
徳力華月(とくりき かづき)様並びに、
同じく、影宮、徳力さま朱鷺宮さま後見役
徳力闇寿(とくりき あんじゅ)様
影宮、徳力様。
分家頭・現当主後見役、徳力万葉(とくりき かずは)様
ご入室でございます」
五分くらいの静けさの後、対面の間に声が響き渡る。
倉智のゆっくりとした声が室内に響き、
御簾越しにその三人が入室してくる気配を感じる。
倉智が恭しく、徳力の三人を出迎えて
対面の間に用意された、それぞれの場所へと座らせる。
「影宮様におかれましては、
お忙しい中、ご足労頂きまして有難うございます。
私、朱鷺宮涼夜さまが生まれた頃より侍従しております倉智と申します。
どうぞ宜しくお願いします。
涼夜さまにおかれましては、先日両陛下よりお話があり
御降家(ごこうか)の承諾をなされました。
涼夜さまは、古の記憶を抱きし誕生あそばし
約束の時を今日(こんにち)までお待ちしていました」
おいおいっ。
倉智、誰が待ってたって?
倉智の向上に、内心心の中で毒づきながら
俺は御簾の中からその徳力の使者を睨み見る。
徳力……肝心の同い年の当主は不在と言うことか。
どうせ矢面に立つには、未だ幼すぎるとはみ出されているか
周囲のものに甘えて、おだてられて調子にのっているだけの何も出来ぬ
飾りの当主なのかもしれない。
同い年の当主と聞いて少しは逢えぬものかと楽しみにしたが、
その願いは叶わぬようだな。
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