2.拒否権のない未来

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『徳力の元に降ろすことになる』 両親である両陛下に告げられた俺の未来。 拒否をすることが出来れば、どれだけラクかわからない。 幼子のように駄々をこねて困らしたところで、 事態は何も変わるはずもなく俺の意志とは関係ないところで 事態だけは確実にその刻(とき)を告げる。 自暴気味になろうが、心が悲鳴をあげようが その現実の全てを受け止めて歩き続けるしか出来ない。 この現状で倉智の言った俺の誇りをどう持てばいい? 誇りも何もない。 生贄になることに誇りを持つことなど 到底難しいように思えた。 降家(こうか)と言う儀式が正式に決まった俺は、 その瞬間から、その準備へと慌ただしくなる。 引っ越しの為の荷造り。 手荷物の整頓。 ゆっくりと読書を楽しむ時間も、 新学期の予習をする時間も何もない。 ただ……儀式のための、影宮と宮家との関係を主にする 書物を復唱し俺が持っていると言う宝と言う存在の鍵を見つけ出すこと。 その為に影宮へ贄になるのだから。 影宮の長である、徳力の当主。 その徳力の当主の中で宝(ほう)の力を持つものが誕生した時、 朱鷺宮のものも誕生する。 その宝の力が尽きるまで朱鷺宮は、 宝(ほう)に付き従い鍵の役割を担っていく。 非現実的な、バカげたお伽噺。 だけど……それを今もずっと意味あるものとして 守り続けている現実。 「涼夜さま。  新学期、涼夜さまは昂燿校の高等部に通われますか?  それとも、私の調べたところですが、  徳力の現当主、徳力神威(とくりき かむい)様は  香宮(こうみや)学院に転入されるとか。  神前悧羅の成績があれば、転入も可能かと存じますが  いかがいたしましょう」 転校? 倉智の言葉に、降家が決まった途端に 転校と言う選択肢が俺の前にも現れるのだと思った。 「皮肉なものだな」 自嘲気味に呟く。
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