久しぶりのこの匂いは――

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 次の朝。今日は土曜。  よく寝付けなかったのは痛い。学校を合法で休める日は土曜と日曜のみ。  相変わらず憎いほどに太陽の光が俺の瞳を刺激する。  ふと、珈琲の匂いがワタシの鼻をくすぐる。  …………ああ。  また、【煙草さん】が――。 「今日は、寝てよう」  落ち着く。  この匂いは懐かしい。  嗚呼。昨日の煙草の匂いが、もう少しだけ残ってたら……。  懐かしかったからか、夢を見た。  昔の夢だ。  ワタシが小学校の時、この匂いで目を覚ますことが多々あった。  母がヘビースモーカーで、毎朝煙草を吸いながら父の珈琲を作っていたのだ。  ワタシは、その二つが混ざり合った匂いが凄く好きだった。  父は母の煙草を嫌っていたが、母の珈琲が好きで、珈琲を飲むためなら我慢する程で。そんな二人を見て登校するのが、ワタシの日課。  その日課は唐突に砕け散ったけれど。  起きたら、匂いは揚げ物の匂いに変わっていた。 「一緒に食べよう」  【煙草さん】が作ったらしい。  いつものワタシだったら、それを無視して銭湯のおばあちゃん特製おにぎりを食べるのだが。  あんな夢を見た後だからだろう。  ワタシは食事を頂くことにした。  久しぶりに三人という人数で食事をした。おばあちゃんと話しながら食べるおにぎりも美味いが、また違う美味しさ。  父とも久方ぶりに学校の話などをした。  【煙草さん】とも、初めてきちんと話した。  やはり【煙草さん】はとてもイイ人で、どうしても母を思い出してしまう。  ワタシが寝ようとすると、【煙草さん】がワタシに耳打ちした。 「明日、少しだけ話があるの。少しだけ早く起きれる?」  ワタシは頷いた。  その日、ワタシは枕をたっぷり涙で濡らし。その分、たっぷり寝た。
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