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青年がにっこりと笑った。
「ある人をね、訪ねに行くところなんです」
「お友達の方?」
青年は一瞬だけ間を置いて、少し照れたようにはにかんだ。
「俺の……お嫁さんになって貰う人」
「あら!!」
女性の顔が明るくなる。
「それじゃ、帰りにうちに寄ってくださいな!! 二人で寄ってくれたら、サービスしますよ!!」
「ええ」と青年は笑い。
「遅くならないように……早めに決着をつけますから!!」
「あはは、プロポーズも兼ねてるのね。武運を祈るわ」
女性が言い終わるのと同時に、バスが停留所についた。
「あ、降りなきゃ」
そう言って、鞄を持って――
「じゃあ、頑張って」
「はい」
笑顔で別れ、バスから降りて行く。
窓の外を見ると、『きな粉餅団子屋』と書かれた看板の前で、手を振ってくれていた。
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