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香菜が智之の部屋を訪れる時間は、彼女の出勤前から仕事帰りへと変わっていった。
理由はシンプルにタクシー代の節約だ。
0時過ぎると電車はなくなる。
客が引かずに1時や2時まで仕事になってしまうなんてのは夜の店では当たり前のことだ。
そして、5時半になれば次第に始発が動き出す。
智之の部屋でコーヒーを飲みながら、仕事の愚痴をこぼしながら4時間ほど時間を潰せば始発で自分の部屋に帰れるのだ。
そんなある日、いつものようにコーヒーを美味しそうに飲みながら香菜は愚痴以外の言葉を紡いだ。
「私のお父さんもね、コーヒーが好きだったんだ」
あまりに唐突だったので、智之は首を捻る。
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