第3章

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「お父さんもコーヒーが好きでトモみたいにコーヒーだけは自分で淹れてたの。 でも、お母さんはコーヒーをそんなに好きじゃなかったみたいで興味も無さそうだったな。 私もその頃はコーヒーの味なんて分からなくて……。」 一口、コクっと飲んで話を続ける。 「お母さん、本当にそんなに好きじゃなかったんだよね、お父さんの事も。 だから別の私よりちょっと年上くらいの男の人と浮気して、お金だけ散々搾り取られて、うちにお父さんと私と借金だけ残して出ていっちゃった……。」 智之と目を合わせた香菜の瞳には涙が滲んでた。 「お父さん、いつもみたいにコーヒー淹れてた。何故か分からないけど私の分も。 その時初めてお父さんのコーヒーを飲んだんだ。ほろ苦いけど温かい美味しいコーヒーだったの。 」 香菜の瞳から静かに涙がひとつふたつと筋を作る。 「美味しいね、お父さんって言ったら、お父さんはちょっと照れくさそうに笑ってたの。だけどね」 「お父さん、その日の夜中に裏山の木で自殺しちゃった……。」
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