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男は立ち上がり、凝り固まった腰を伸ばしながら狭いキッチンへと向かった。
ヤカンに水を入れてコンロに火をつける。
手馴れた仕草で改めて飲むためのコーヒー豆をセッティングしていく。
お湯が沸くまでにはもう少し時間が掛かる。
胸ポケットからタバコを取り出して火を付け、タバコの辛味を味わおうと深く吸う。
紫煙はゆっくり確実に室内を充たしてゆく。
タバコはその役目を終え灰皿で揉み消された頃、ヤカンのお湯が沸いた。
豆を蒸らす為のお湯をひと回し。
コーヒー豆の香ばしい香りを確認してから、今度はマグカップ1杯分のお湯を注ぐ。
出来上がったコーヒーに満足気な笑みを浮かべながら、自分は小説家よりも珈琲屋の店主の方が向いてるのじゃないかと思考し想像してみる。
現実逃避な想像は先程までの創作活動より遥かに容易い。
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