第1章

7/7
前へ
/17ページ
次へ
「あ、私にもコーヒー頂戴」 やっぱり珈琲屋の店主が天職なのか? と少々情けない気持ちになりながらも、男はお湯を沸かし直し、新しいコーヒー豆を用意する。 香菜は勝手知ったる我が家のようにベッドに腰を下ろした。 「邪魔しちゃった?」 と殊勝な事を言ってきたのは、パソコンのWord画面が目に入ったからだろう。 「いや、ちょうど休憩してた所だ」 そう言って淹れたてのコーヒーを手渡す。 「ん~、やっぱりトモの淹れたコーヒーはいいねぇ」 香菜は満足気に目を細めながらコーヒーをすする。 俺、安田 智之のことをトモと呼ぶのは今は目の前にいる香菜と田舎で暮らしている両親くらいだ。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加