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「わ、たし……」
自分の声を聞いたのはいつが最後だったんだろう。だなんて、変な事を思っている。
「いい加減受け入れろ」
気になる人が気になる言葉を言う。『受け入れろ』だなんて、変な事を……。
「じゃないと、お前の両親も受け入れられない」
気になって『いた』人はそれを言うと、わずかに残っていたタバコをもう1度吸い、手の中で潰す。
煙はまるで線香のように細く立ち上ると空に溶けて消えてしまい、それと一緒に、今まで溶けて消えてしまっていたものが浮かび上がってくる。
誤魔化してタバコの煙を嫌がるように顔を顰めれば、涙が1つ。
「悲しいのは、お前だけじゃない」
そうだった。
そうだったんだ。
「お前が気にしている事はなんだ?」
初めて見た彼の顔は、どこか逢いたかった人達に似ていた。
父がずっと吸っていたタバコ
母親がよく着ていた上着
友達と買い物に行ったときに買おうと思ったパンツの色
私がずっと気にしていた人達と。
ずっと、最後に逢いたかった人達と……。
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