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きれいで、美しくて、強くて、ピュアで、不思議な十九歳の女の子。
そばで彼女を見ていて、まだ女性と表現するには早すぎるというか、フィットしないとレイジは感じる。
そうしてサラは使命にも似た宿命を母親から託されている。
初めて話を聞かされたとき、当初はにわかに信じられなかったが、一緒に過ごすようになり、日々彼女の特異性を目の当たりにし、レイジの決意は頑なになっていった。
絶対に俺がサラを護り抜く、と。
同時に別の感情もおぼろげに膨らんだが、それは十八歳の少年にはまだ上手く咀嚼できない心緒でもあった。
「ねえ、聞いてるの?」
その声で我に返ったレイジは、気を取り直して言葉を口にした。
「とりあえず今夜はここにとどまろう。でも安心して。サラが休んでる間も、ずっと俺が起きてて護るから。だから俺をこの部屋にいさせてくれないか。もちろん君には絶対に触れない」
「お好きに」
サラはそう言って立ち上がると、首元に巻いたスカーフを雑に外して、ブーツを履いたまま身を投げ出し、ベッドへ仰向けになった。肩まで伸びた茶色の髪がふわりと空気で流れて一瞬だけ宙で踊った。
「で、なんであんたもこの教会が奇妙だって思うようになったの? その訳を聞かせてよ」
黄色くくすんだ天井を見つめてサラが訊いた。
レイジは今しがたまでサラが腰かけていた椅子に座って答える。彼女の温もりがわずかだけ尻に伝わった。
「食料、水、電気、細かなことをつつき出すときりがないけど……」
そう前置きして、彼は言葉を続けた。
「もしかして大きな納屋か地下室があって莫大な物資のストックがあるのかもしれない。あるいは第一波のあと、まだ世界が豊かだった頃にかき集めて溜めこんでるのかも。車輛を所有している可能性もある。となると、今触れたそれらの問題はとりあえずクリアになる。彼が言うように六十名以上で共生していたのなら、そのぶんの在庫が残っていることも想定されるし」
そこでレイジはひと息ついた。論理はあまり得意なほうではない。次につなげる台詞を選び考えようとしていると、こらえ性のないサラのほうが先に口を挟んだ。
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