第1章

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 私はいつものように市民の森の中を散歩していた。 そして、いつものように悠然と枝を広げた広葉樹の幹に体を預けて、深呼吸をした。 空にはまだ夜の余韻が残っていて、日の光はまだ力強さを発してはいない。 そこで、私はそのままに目を閉じる。 鳥の声か、虫の声かは定かではないが、葉の擦れる音の隙間を縫って高く細い音が走り回っていた。 しばらく森の音楽祭に耳を傾け、森のまだ冴えた空気を大きく吸い込んだ。 「はあ…」  息を一気に吐いた音は、森の音に掻き消されて、周りには聞こえていなかったろう。 私はなんだかすっきりした気持ちになって、顔を両手で叩いて、その木の下を後にした。
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