第1章

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 住宅街の途中で、もう何年も前に卒業した小学校を横目にまた別の住宅街へ入り込む。 そして、その突き当たりにある、最近付けたばかりの太陽光パネルが光っているのが私の家だ。 玄関を開けてリビングを覗くと、既に母が魚と漬け物を用意して待っていた。 そして、何を言うでもなく、ただ目の前に置かれた食事を口の中に入れる。 「寂しくなるわね」  母は口惜しそうに窓越しに空を見上げた。 寂しくなる、か。 今日もこの瞬間までいつも通りに過ごしていた私だったが、いつもとは違う感情を抱いた。 寂しい、と一括りにはできない、胸の締め付けられる感じと、こうもいつもがいつもじゃなくなってしまうんだ、という呆気なさ。 そして、応援する気持ち。
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