第1章

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「ほら、そろそろ約束の時間じゃないの?」  物思いに耽っていると、洗い物をしている母に急かされた。 返事をしようとは思ったが、多分「ああ」とか「うん」とかしか言ってなかっただろう。 ふらふらと玄関まで出て行くと、昨日準備したリュックサックを肩に掛けた。 「ちゃんと送ってやんなさいよ」 母がそんなようなことを言って私の背中を平手で叩く。 いつもなら、痛いと文句を言っているところだが、今はそんなことすら口にする気になれなかった。 それでも、母はいつもと同じ「いってらっしゃい」で私を送り出してくれた。
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