第1章

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「ううん、全然、待ってないから」  私もできる限りいつも通り、笑ったつもり。 だけど、絶対いつも通りにはなっていない。 「…じゃあ行こうか」  ちょっと間を置いて、愛奈が歩き出す。 そして、それに合わせて私も歩いた。 いつもはゲームのこととか、テストの酷い点数のこととかで笑い合うのに、今は二人とも押し黙って、顔も合わせないで、ただ隣合って歩くだけだった。 私も何か話題を振りたかったけど、さっきの変な思いが思考を遮って、とうとう駅に着くまで何も話すことはできなかった。 パチンコ屋や牛丼屋が軒を連ねる駅前商店街は地元の人しか使っておらず、金沢文庫駅も随分と寂しげな雰囲気だ。
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