始まりの始まり

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13 「……………え?」 にこは何が起こったのか、理解できずにいた。 同じくキッチンに居合わせた希と絵里も同様の反応だった。 床には割れた小皿とフォーク、ウェーブナイフが転がっていた。 落下の衝撃で形が歪んでしまったチーズケーキが、箱の中から顔を出していた。 この山の中の別荘全体に、爆発のような尋常じゃない音が鳴り響いた。 原因と場所もわからないが普通じゃないことは理解できた。 (キッチンは私達がいる…だからガスの爆発でもない) じゃあ一体?と考えて、嫌な予想がよぎる。 (まさか…強、盗?銃か何かで強引に入り込んできた?) 別荘の近くには民家もなければ人が寄るようなところもない、夜の山となればなおさら人気はなくなる。 さらに言えばこの立派な別荘だ。 もし強盗側から考えれば、こんなに証拠が残りづらく高所得者が所持しているだろう物件を見逃すわけもない。 そんな奴らは基本必ず金銭目当て。 ならいろいろな手段が思いつくだろう。 単純に襲いカードや現金を根こそぎ奪ったり、人質をとって身内に身代金を要求… (人質…) にこの中で何かが弾けた。 「のぞみっ!!えりっ!!」 硬直していた2人の体が反応する。 「…に、にこ?一体何が…?」 「今すぐに穂乃果達の部屋に戻るわよ??」 「ど、どうしてなん…?」 「分からない!けど強盗とかそんな類の奴らが侵入したのかもしれないっ!」 「そんな!……もしそうなら早く戻って皆で逃げないと…」 「さっきの音は玄関の方やったから……皆がいた場所とは逆…まだ間に合うはず」 「えぇだからこそ、いち早く戻って無事を確認しな…」 『いやぁぁっぁあぁぁぁぁ!!!!』 誰の声かわからない悲鳴が別荘に響く。 じわりじわりと予想が現実味を帯びてきた。 にこの背中に冷や汗がツーっと流れ落ちる。 「…急ぐわよ希、絵里」 「…えぇ」 「…わかってるんよ」 全員震えた声で返事をし、全力で駆け出した。 (…守らなきゃ…私の…大切な仲間をっ…) そう決意したにこの右手には希が落としたウェーブナイフを拾い上げ、強く強く握りしめていた。
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