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「にこっち……何…してんの?…っ一緒に逃げるよ!早く来て!戻ってきてよ!」
ショックで気力を失い、力無く凭れかっている絵里を抱えながら希が叫ぶ。
にこは震えそうな声を正し、いつものように話す。
「希、関西弁抜けちゃってるわよ?まぁそんなあんたも新鮮ね」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?そんなところにいたら穂乃果ちゃんみたいに…」
「ありがとう、希」
「………ぇ?」
「早く、ここから逃げなさい」
振り返らずにそう伝える。
「な、何を言って…」
「絵里を連れて逃げなさいって言ってるの。私は方法はわからないけど…足止めするから」
「そ、そんなの無理に決まってる??皆で逃げようって最初に…」
(…やっぱり希ならそう言うと思ってた)
苦笑いしながらそう思う。
続く言葉は棘を立てて
「じゃあ聞くけどさ?今3人で逃げたって、絵里がその状態じゃすぐに追いつかれるのがわからないわけ?それに希達の位置から距離は十分離れてるし、逃げることだって簡単でしょ?」
「でもにこはっ?にこっちは!?」
「大丈夫よ、隙でもついてすぐに合流…」
黒い人型は穂乃果から直剣を抜きにこへ向かってくる。それでも言葉を続ける。
「するから…希、もう選択肢は一択よ」
額から汗が流れ落ちる。
「…約束、だからね?」
「…え?」
「絶対に戻ってきて」
「えぇ、約束…するわ」
(守れる可能性は低いけど…)
心に中でそう付け足す。
「にこ…」
気力を失っていた絵里の絞った声がし、反射的に頭だけ振り返る。
「必ず…後で会いましょう……私も…頑張るから…」
再び前を向きなおし、
「…絵里のその言葉だけで百万力よ、それじゃあ………またね」
(会えたら…会おう…必ず)
こくりと頷き、にこに背中を預けていった。
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