始まりの始まり

24/30
前へ
/47ページ
次へ
「にこっち……何…してんの?…っ一緒に逃げるよ!早く来て!戻ってきてよ!」 ショックで気力を失い、力無く凭れかっている絵里を抱えながら希が叫ぶ。 にこは震えそうな声を正し、いつものように話す。 「希、関西弁抜けちゃってるわよ?まぁそんなあんたも新鮮ね」 「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?そんなところにいたら穂乃果ちゃんみたいに…」 「ありがとう、希」 「………ぇ?」 「早く、ここから逃げなさい」 振り返らずにそう伝える。 「な、何を言って…」 「絵里を連れて逃げなさいって言ってるの。私は方法はわからないけど…足止めするから」 「そ、そんなの無理に決まってる??皆で逃げようって最初に…」 (…やっぱり希ならそう言うと思ってた) 苦笑いしながらそう思う。 続く言葉は棘を立てて 「じゃあ聞くけどさ?今3人で逃げたって、絵里がその状態じゃすぐに追いつかれるのがわからないわけ?それに希達の位置から距離は十分離れてるし、逃げることだって簡単でしょ?」 「でもにこはっ?にこっちは!?」 「大丈夫よ、隙でもついてすぐに合流…」 黒い人型は穂乃果から直剣を抜きにこへ向かってくる。それでも言葉を続ける。 「するから…希、もう選択肢は一択よ」 額から汗が流れ落ちる。 「…約束、だからね?」 「…え?」 「絶対に戻ってきて」 「えぇ、約束…するわ」 (守れる可能性は低いけど…) 心に中でそう付け足す。 「にこ…」 気力を失っていた絵里の絞った声がし、反射的に頭だけ振り返る。 「必ず…後で会いましょう……私も…頑張るから…」 再び前を向きなおし、 「…絵里のその言葉だけで百万力よ、それじゃあ………またね」 (会えたら…会おう…必ず) こくりと頷き、にこに背中を預けていった。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加