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再び接近する直剣、ブンッと淀みない斬り払いに素早く後退し避けるが、みぞおちに剣先が掠る。
「ぅ…?!」
体には届かなかったものの、服が一部斬られた。
黒い人型は払った流れで剣を持ち上げ、頭上からの刺突が心臓に向かい放たれる。
にこは右手のウェーブナイフに左手を添え、突き上げ受け流す。
「くっ、うぅぅぅぅぅ!!」
ガリガリガリッ!とウェーブナイフが削られ続けながらも防ぎきったにこは、再びザッと後退し距離をとった。
きっちりと真正面から防いでいたら今頃斬り伏せられていただろうと思う。
ガチャガチャっと重々しい足音を立て、再びこちらに向かってくる黒い人型。
詰め寄り、直剣を振りかぶり斜めからの一閃。
にこはそれに反応し、瞬時に低姿勢になり回避。
ツインテールの毛先がスッと断髪される。
そこから再び心臓めがけ鋭い刺突が迫る。
ハッと顔を上げ、すぐさまウェーブナイフで受け流す、が
(折れ…!?)
そう思い、瞬間的に全身を横へ動かすと同時に、削られていったウェーブナイフがベキンッと乾いた金属音が響き渡った。
刺突が速度を取り戻し、にこの左腕を捉え、そして抉った。
「~~~っ!!!」
すぐさま横をすり抜け、くの字になったテーブルを挟み、大きく距離をとる。
アドレナリンが出ているのか、それともあの剣のせいなのか分からないが不思議と痛みはなかった。
しかし、出血しているのは疑いようのない事実。腕からはポタポタと止めどなく垂れる血が出て、肩で荒く息をする。
(強すぎる………これ以上は……凌ぎきれないっ!)
本能が状況をそう判断し叫んでいた。
(逃げるのなら、今しかない…)
距離を開けた際に部屋のドア付近まで駆けていたのは正解だった。
まだ時間稼ぎとしてはかなり不十分だが、このままでは数分後、数十秒後に直剣がこの心臓を貫いている。
そう容易に想像出来る。
(それにまずは2人との約束も……守らなきゃ…倒れていられない……必ず…会いに行くから。希、絵里!)
そう強く願い一直線に駆け足で部屋のドアへ向かい右手で押し開いた。
それと同時にニコの体は青白い光に包まれた。
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